日本全国、そして多摩地域の多くの自治体でも重要な課題である少子高齢化。多摩地域の総人口のうち65歳以上が占める割合は25.33%となり、およそ4人に1人が高齢者にあたる(※1)。
多摩地域で最も人口の多い八王子市では、2040(令和22)年には高齢化率が32.4%に達すると推測され、それとともに見込まれる認知症や要介護認定率の上昇への対応が急務となっている。
高齢者の増加に拍車がかかる中、持続可能な地域づくりのためには、高齢者の健康維持が欠かせない。そこで2021(令和3)年に八王子市がスタートさせた介護予防ポイント制度が「てくポ」。ICT(※2)を活用し、認知症や介護予防、そしてフレイル予防を目的とする本制度について、八王子市とアプリ開発を担当した株式会社ベスプラに伺った。
※1:東京都総務局統計部「住民基本台帳による東京都の世帯と人口 2021(令和3)年1月1日」
※2:情報通信技術(Information and Communication Technology)
◎八王子市 https://www.city.hachioji.tokyo.jp
◎株式会社ベスプラ https://bspr.co.jp
ポイント
課題の背景・活動のきっかけ
●超高齢社会に伴い、多摩地域で最も人口の多い八王子市でも認知症や要介護認定率の上昇への対応が急務であること
●もともと高齢者の社会参加を支援する「高齢者ボランティア・ポイント制度」を2008(平成20)年から実施していたが、ポイント付与やお買い物券への交換を職員が手作業で行うなどの課題があった
●自治体の抱える健康福祉分野の課題をヘルスケアベンチャーに向けて発表する「ガバメントピッチ」(関東経済産業局主催)で株式会社ベスプラと出会い、本制度が実現
活動の特徴
●「てくポ」は、一般ユーザー向けに株式会社ベスプラが開発した「脳にいいアプリ」に、八王子市の施策に合わせた機能を追加した「介護予防ポイント制度」。同市在住の65歳以上(2023(令和5)年度から60歳以上)でスマートフォンを持つ方が対象。
●歩く・食べる・脳トレ・ボランティアなどの脳や身体に良い活動をすることで、記録を楽しみながら健康管理ができ、ポイントが貯められる。ポイントは市内のお店(ポイント利用店)で使え、またPayPayポイントに交換も可能。
●「てくポ」のもとになった『脳にいいアプリ』は、科学的なエビデンスに基づいて設計。そこにポイントというインセンティブを追加して行われた市の実証実験では、認知症予防や生活習慣病予防についての効果が得られ、ユーザーの継続利用率も高いことがわかった。
●ICTを使った高齢者の健康支援は、持続性と発展性を持った制度のモデルケースとして全国の自治体からも注目されている。
●「フレイル」とは、健康な状態と要介護状態の間とされ、加齢とともに身体的機能や認知機能が低下した状態のこと。より早くからの「介護予防」がフレイル予防であり、認知症の予防にも役立つ可能性がある(参考:東京都福祉保健局「東京都介護予防・フレイル予防ポータル」)。
てくポの仕組み
てくポの画面
目指す未来
超高齢社会のなかでも高齢者の健康支援を持続・発展する仕組みを確立すること。
また、高齢者の健康意識を高め、総じて市民の認知症や介護予防、フレイル予防を自治体として実現すること
パートナー・関係先
◎てくポ(スマートフォンを使った介護予防ポイント制度)https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/welfare/001/p029443.html