未来を創るたまの企業
地元に雇⽤と賑わいと価値向上を
地域課題を解決する⼟地開発
エム・ケー株式会社
[2025年04月 取材]
茨城県五霞町の産業⽤地拠点「ネクストコア五霞」
「⼤⼿デベロッパーが⼿をつけない市街化調整区域(※1)にこそ、私たちの役割があります」。そう語るのは⽇野市に本社を構えるエム・ケー株式会社の専務取締役・⼩林久恵さん。同社は、関東エリアの市街化調整区域に存在する遊休地や農業の継続が難しくなった⽥畑などを、物流拠点や商業施設、⼯場などの産業⽤地へと⽣まれ変わらせる不動産開発を⼿掛ける企業である。同社のまちづくりは、これまで注⽬されることのなかった地域に新たな雇⽤を⽣み出し、賑わいをもたらすとともに、まち⾃体の価値向上にも貢献している。
また、保育園や⽼⼈ホームなど社会福祉施設の建設を通じて、⼟地を有効活⽤したいオーナーのニーズと地域が抱える社会課題を同時に解決する事業も展開する。
「ともにまちづくりを」のスローガンのもとに、⾏政や住⺠、ゼネコン、コンサル、⾦融機関などと連携し、地域の⼈々の幸せを、まちづくりという形で具現化することを⽬指す。この取り組みは単なる⼟地活⽤にとどまらず、地域住⺠の暮らしを⽀える重要な役割を果たしている。⼤規模な開発には10年以上かかることもあるが、その⻑期的な視野と地域との信頼関係の構築こそが強みであり、他社にはない競争⼒を持つ。JR ⽇野駅近くにオフィスを構えるエム・ケー株式会社を取材した。
※1︓都市計画法に基づく区域区分の⼀つで市街化を抑制する区域。原則として住宅や商業施設の建設が認められていない。
事業の特徴
地域に根ざしたまちづくりをする総合不動産デベロッパー
1988(昭和63)年の創業から37 年にわたり、地域に根ざしたまちづくりを展開しているエム・ケー株式会社は、関東各地で⼤⼩様々な事業を展開する総合不動産デベロッパーである。エム・ケーの「M」は、ハウスメーカーであるミサワホームのM(今回取材した⼩林久恵さんの⺟⽅の叔⽗がミサワホーム創業者)、そして「K」は久恵さんの⽗であり代表取締役・⼩林勁さんのK に由来する。娘である久恵さんは現在、専務取締役として経理・財務・総務・⼈事・広報の管理部⾨の舵を取る。社員50 ⼈という少数精鋭で、これまでに開発した⼟地⾯積は507ha、⽣まれた雇⽤が約16,380 ⼈分、地域にもたらした税収は年間26 億円以上にもなる(※2)。
※2︓2025(令和7)年5 ⽉時点
⽇野駅から徒歩3 分にある本社オフィス
規制地をまちに変える「産業⽤地開発事業」
同社の代名詞と⾔えるのが、都市計画法上の市街化調整区域における⼤規模開発である。通常、⼤⼿デベロッパーが敬遠するこのエリアにこそ、同社は可能性を⾒出す。たとえば、現在開発中の産業⽤地拠点「ネクストコア⻘梅」は圏央道⻘梅インターチェンジ直下の、元は茶畑だった広⼤な⼟地に物流施設などを誘致するプロジェクト。これにより地元に雇⽤と税収、そしてまちの資産価値向上をもたらし、地域を活性化する計画である。「ネクストコア」という名称は、同社開発の産業⽤地拠点につく頭⽂字であり、同様の開発実績がこれまでに45、開発中のものが15 ある。開発に伴う地権者との調整や⾏
政⼿続きには数年単位の期間がかかり、その後⼟地を造成して道路を通し、インフラを整備した上で、企業を誘致していくため、プロジェクト終結までには最⼤15 年を要したこともあるが、「地域を必ず豊かにする」という信念を持って進めている。
⻘梅市で開発中のネクストコア⻘梅49.4ha
埼⽟県蓮⽥市で開発中のネクストコア蓮⽥26.2 ha
地域課題と⼟地オーナーの悩みを解決する「地域課題解決型ビジネス」
もう⼀つの柱は、15〜30 年間ほどの⻑期間、⼟地や建物を⼀括で借り上げ、その地域のニーズに応じた⽤途で利⽤者に転貸するヘッドリース事業である。具体的には⾼齢化や相続などにより使われていなかったり管理に困ったりしている⼟地に、保育園や⾼齢者向け施設などを建設し、賃貸している。同事業の実績としては現在、保育園10 園と⾼齢者向け施設12 棟があり、⼟地オーナーの悩みはもちろん、待機児童や⾼齢者施設の不⾜などといった社会課題に応えている。「保育園の建設は待機児童問題に直⾯した⾃⾝の育児経験がヒントです」と語る久恵さんの声からも、この事業が単なる収益⽬的でなく、地域課題の解決を⽬指していることがうかがえる。
多摩市の認可保育園「やまとさくら保育園」
世⽥⾕区の住宅型有料⽼⼈ホーム「イリーゼ⽤賀」
地域とともに成し遂げるまちづくり
⼿掛ける事業は幅広いが、その⼀つひとつにその地域で積み上げた信頼と情熱が詰まっている。なかでも2013(平成25)年に開業した「イオンモールつくば」は、不法投棄が横⾏する荒地からの逆転劇であり、13 年にわたる交渉と開発努⼒の賜物である。⼟地オーナー100 名以上との調整や途中で法改正による許認可の規制など、数々の困難を乗り越えて建設され、同社にとって初のショッピングセンターの開発事例となった。「完成後に地図が変わるのを⾒て⼤きな達成感がありました。また、その後も地域で愛される場となっていると聞くと感慨深く、『ここの映画館で妻と初めてデートした』『ここで安定した職を得られた』などと聞くと開発中の苦労は吹き⾶びます」と語る久恵さんの⾔葉に、地域とともに成し遂げたまちづくりへの誇りがにじむ。
茨城県つくば市の「イオンモールつくば」は同社初のショッピングセンター開発(画像は完成予想図)
地域とともに成し遂げるまちづくり
2023(令和5)年より、持続可能な交通インフラとして「シェアサイクル」事業がスタート。⽇野市とのSDGs 連携(※3)から⽣まれたこのプロジェクトでは、急坂が多い⽇野市に住む住⺠の移動負担を軽減するため、ソフトバンク傘下の「HELLO CYCLING(※4)」と連携して⾃社投資で電動⾃転⾞を購⼊。現在では同社の社名が⼊った2,000 台が⾸都圏を中⼼に稼働している。地元で⾒かけることが多い同⾃転⾞は企業広告としての効果も⼤きいという。利便性と経済合理性、そして同社が⽬指す地域貢献が⾒事に重なった好例と⾔える。
※3︓⽇野市SDGs 推進事業者登録制度。エム・ケー株式会社は令和5 年1 ⽉に登録
※4︓OpenStreet 株式会社運営のサービス
⽇野市内でもよく⾒かけるエム・ケーの⾃転⾞
⼩さなチームが動かす⼤きな⼒
同社が事業を拡⼤し続ける理由の⼀つに、あらゆる関係者とともにまちをつくる姿勢があるという久恵さん。社員全員で考えたスローガン「ともにまちづくりを」にはその哲学が凝縮されている。「会社で⼤事にしていることは『約束を守ること、裏切らないこと』で、これは当社代表の⾔葉です。⼟地オーナーのみならず⾏政、地域住⺠、⾦融機関のお⼀⼈おひとりとの関係性や距離感など、徹底してクリーンな社員の姿勢が、会社の信頼につながると教えています」と久恵さん。続けて最近あった社内のエピソードを聞くと、「先⽇社内で、⼊社1 年⽬の社員がインターンで来た⼤学⽣に『⾃分の仕事は売り上げを作ることではなく、信頼を積み上げること』と話していて、聞いてみると彼も5 年⽬の先輩に同じように教わったそうで、感動しました」。久恵さんは普段から社員に対し、彼らの⺟親だと思って接しているという。「せっかく多くの中から就職先として選んでくれたのであれば、喜んで仕事をしてもらいたいし、⼩さなチームで⼤きなことを成し遂げられる、夢のある仕事と感じてもらいたい。社員の幸せとお客様の幸せと会社の成⻑が、私のミッションです」と意気込む。
お話を伺った人
エム・ケー株式会社
専務取締役 ⼩林 久恵さん
企業概要
HP | https://mk-corp.co.jp |
代表者名 | ⼩林 勁 |
資本⾦ | 1億円 |
創業 | 1988 年11 ⽉1 ⽇ |
社員数 | 50 名 |