未来を創るたまの企業

2026.09.01
東大和市

地域の住宅産業を支える
サポーターが 本気で向き合う大工不足

株式会社タカキ

[2026年06月 取材]

 

 住宅業界では近年、人口減少を背景に住宅需要の先細りが懸念される一方、住宅着工戸数も減少傾向にあり、職人の高齢化や担い手不足も深刻化している。特に木造住宅を担う大工の減少は顕著であり、国土交通省によると、建設業就業者の約4割が55歳以上である一方、29歳以下は約1割にとどまり、若年入職者の確保・育成が喫緊の課題だ。地域の工務店においては、人材確保や技術継承、現場の人手不足などが経営課題となり、住まいづくりを支える体制そのものが揺らぎつつある。

 こうした状況のなか、東京都東大和市に本社を置く株式会社タカキは、木材や住宅資材の供給を主力事業としながら、地域の工務店を支える新たな役割を担っている。創業以来、木材販売やプレカット事業、住宅設備の提供を通じて地域の住宅産業を支えてきた同社。近年は、工務店支援や上棟請負事業にも取り組むほか、若手大工を育成する「東京大工塾」を地域の工務店、建材メーカー、問屋とともに設立し、地域の住まいづくりを支える人材育成にも力を入れている。

 「木材を売る会社」から「住宅産業のサポーター」へ。工務店支援、上棟請負、大工育成まで事業領域を広げながら、良い住まいづくりを支える同社の取り組みについて、役員・社員の方々に話を聞いた。

 


事業の特徴

 

地域に必要なことを積み重ねてきた70年

株式会社タカキは1956(昭和31)年、創業者の髙木昭義氏が小金井市で創業した材木店をルーツとする。当初の主たる事業は木材の販売であったが、環境の変化とともに領域を拡大し、キッチン、お風呂、トイレ、洗面化粧台などの住宅設備機器や、窓や玄関ドアなどのサッシ類、床や壁に使う建材も取り扱い始めた。1980年代にはいち早くプレカット(※)の加工機を導入し、埼玉県狭山市に工場を設けて木材加工の効率化に取り組んできた。現在、東京・埼玉・神奈川を中心とする地域工務店など約450社と取り引きを行っている。
「私たちの目的は木材を販売することだけでなく、お客様や住宅産業が抱える課題を解決することです」と話すのは、取締役・常務執行役員の片山利明さん。プレカット事業をはじめ、その時々に求められるサービスを取り入れながら事業領域を広げてきた。その根底にはいつも、「住宅産業を支援したい」という一貫した思いがある。
※木造加工の工程をコンピューター制御された工場で加工することにより、無駄なく効率的に、高品質・高精度の木造加工を実現する工法。

東大和市中央の本社
プレカットの様子

 

業界全体の課題に向き合う大工育成プログラム「東京大工塾」

同社の取り組みで特に象徴的なのが、2016(平成28)年に設立された一般社団法人東京大工塾である。同塾は若年大工の育成と技術の継承、伝統木造建築の安定供給体制の構築を主な目的に、近隣地域の工務店や建材メーカー、問屋とともにつくった組織で、同社が事務局を担う。設立の背景には、住宅産業全体を揺るがす深刻な大工不足がある。「創業当時と比べると、職人の数は著しく減っています。家を建てられる職人さんがいなくなれば、工務店も成り立ちませんし、住宅産業そのものが続きません」と片山さんは語る。大工という職業は、小学生の「将来なりたい職業」ランキングで上位に入ることもある一方、建設業界では若年入職者の減少が続いており、担い手不足が深刻化している。要因の一つには、技術が身につくまでに時間がかかることや、「親方に弟子入りする」という昔ながらの働き方に対し、不安を感じる若者が多いことがある。そこで同塾では、大工志望の若手を会員工務店がまず正社員として採用、現場で働きながら技術や知識を学べる仕組みを整えた。

事務局を担う「一般社団法人東京大工塾」
木造建築の伝統技術・技能を学ぶ

 

仲間とともに成長できる「東京大工塾」の育成

同塾は自社の社員を育てるための組織ではなく、工務店やメーカーと連携しながら、住宅産業全体の担い手を育てる仕組みである。入塾後は、平日は建築現場でOJTによる実務を経験、土曜日には職業訓練校で建築の基礎知識を学び、正社員として給与も受け取ることができる。同塾の賛助会員として建材メーカーなどが育成費用を支援することで、社会人経験のない志望者も安心して技術習得に取り組めるほか、工務店が若手人材を育てやすい環境づくりにもつながっている。現在、20社を超える工務店が参加し、塾生は累計68人にのぼる。
従来は、親方に弟子入りして技術を学ぶのが一般的で、若手大工にとっては悩みを相談できる相手が職場には少なく、孤独になりやすい環境だったが、ここでは悩みや目標を共有できる仲間がいる。「小さな工務店の求人は数年に一人ということもありますが、大工塾では同期ができます。修了後も懇親会や交流会を通じて横と縦のつながりが生まれることも、塾の大きな意義となっています。高卒、大卒のほか、社会人を経験してから入る方もいます」と片山さん。同塾では地域全体で人を育てることを使命としており、同社は事務局として教育内容の標準化にも取り組む。こうした運営を支える同社の姿勢からは、「地域の住宅産業を支えたい」という熱意がうかがえる。

小金井駅前のコラボイベントの様子

 

喫緊の人手不足を支える上棟請負事業

併せて同社が取り組む事業が、上棟請負「建て方サポート」である。「上棟」とは、住宅の基礎工事の後、柱や梁を現場で組み立て、建物の骨組みを完成させる工程だ。上棟日には朝からクレーンで木材を吊り上げ、複数人が連携して柱や梁を組み上げ、夕方までに屋根の頂部となる棟木(むなぎ)を取り付け、雨に濡れないよう屋根下地を施工する。一日で家の形が現れるため、住宅建築の工程でも最も重要な工程の一つである。一般的に4~6人程度、規模によってはそれ以上の大工が必要となるが、工務店では大工不足により必要な人数を確保できないことも少なくない。加えて、上棟日は天候や日取りを考慮して決めるため日程変更が難しい。そこで同社は、上棟作業そのものを請け負う事業を始めた。
「東京大工塾は将来に向けた取り組みですが、こちらは今足りない人手を補う取り組みです」と、本社機能本部総務企画部部長の髙木健太さん。組み立て作業を同社が請け負うことで、工務店は上棟日に必要な人員を確保する負担を軽減できる。また、高所での組み立て作業は身体への負担も大きいため、経験豊富な大工がより高度な技術を要する造作や仕上げなどの工程に力を発揮できる環境づくりにも一役買っている。髙木さんはさらに、「現場に寄り添った資材配送も、木材販売会社だからこそ提供できるサービスです。配送は専門事業者ではなく、建築現場の流れや工程を理解した自社社員が主に担当。朝に使う資材と午後に使う資材、1階用と2階用の資材など、その日の現場で使いやすいよう細かく配慮しています」と語る。資材供給と施工支援を一体で行える同社の強みを生かしたサービスだ。

上棟作業そのものを請け負う事業「建て方サポート」を開始

 

新卒採用やイベント開催を継続

近隣地域とのつながりも大切にしている。採用面では、本社や工場の近隣にある学校と関係を構築。近年まで大手就職サイトを利用せず、学校の紹介やインターンシップを通じ、多摩大学や嘉悦大学、日本工学院八王子専門学校、総合学院テクノスカレッジ(東京工学院専門学校)、都立田無工科高等学校をはじめとする多摩地域や工場のある埼玉県狭山市周辺の教育機関を定期的に訪問し、信頼関係を築いて採用してきた。「その地で学んだ若者がその地の企業で働き、その地を支える、その循環を大切にしたいと考えています」と、採用担当の左舘さん。こうした取り組みは地域に根差した企業ならではである。
また、子どもたちにものづくりの楽しさやまちとの関わりを伝える活動として、毎年、地域の事業者の方々と協力して「夏休み木工チャレンジ」を開催。小金井市で10年以上、東大和市でも5年にわたり開催する人気イベントで、未就学児から小学生の子どもたちが工作に挑戦する。同社が提供する木材キットのほかに、地元の企業や商店が材料をそれぞれ無料で提供。子どもたちがまちを巡ってそれらを集め、自分だけの作品を完成させるので、地元にどのような企業やお店があるのかを知り、人々と交流する機会にもなっている。応募者数は年々増加しており、まちの恒例イベントとして定着。こうした活動の根底にあるのは「まちの未来を支える人を育てたい」という願いだ。

「夏休み木工チャレンジ」の様子(小金井市)
「夏休み木工チャレンジ」の様子(東大和市)
木製のおもちゃも製作販売

 

人を育て、地域とともに未来をつくる

同社の経営の中心にあるのは、「大切だと思うことを愚直に実践し、関係する人々を幸せにする」という考え方。創業者が掲げた「良い会社にしよう」という言葉は、現在も社員に受け継がれている。また、創業60周年を機に生まれた「ゾウのように」というモットー(心がけ)も、社員一人ひとりの判断基準になっているという。内容はゾウの耳や鼻、牙になぞらえたユニークなもので、ゾウのロゴマークと合わせてカードを作って全社員が携帯する。
木材店として始まった株式会社タカキは今、人を育て、工務店を支え、地域の住まいづくりを支える企業へと進化した。その取り組みは住宅産業を未来へつなぐ土台となっていくだろう。

2026年8月に70周年を迎えた
モットー(心がけ)のカードを全社員が携帯

 


お話を伺った人

 

(肩書き・氏名)
(左から)
株式会社タカキ
本社機能本部 総務企画部 総務企画グループ 主任
左舘 由美子さん

取締役 常務執行役員 本社機能本部 本部長
片山 利明さん

本社機能本部 総務企画部 部長
髙木 健太さん

 

企業概要

HP https://www.takakigroup.net
代表者名 髙木 聡
資本金 90,000,000円
創業 1956年
社員数 社員117人

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