未来を創るたまの企業
環境に良いことしかやらない企業が
災害に強い社会をつくる
MIRAI-LABO株式会社
[2025年12月 取材]
気候変動の進行や災害の激甚化、エネルギーの在り方そのものが問い直される時代において、環境と安全、そして社会インフラを同時に支える技術の重要性が高まっている。八王子市滝山町に本社を構えるMIRAI-LABO株式会社は、そうした課題に20年近く向き合い続けてきた企業である。
同社の起源は、「いなくなってしまったホタルを再生しよう」という事業にある。自然環境を守る現場で直面した「生態系を保全すること」と「人の安全を守ること」の矛盾は、やがて街路灯の在り方そのものを問い直す技術開発へとつながった。日本の伝統的な住まいの知恵から着想を得て生まれた独自のリフレクター(反射板)技術は、日本国内のLEDの普及を飛躍的に早め、省エネと高照度を両立する革新をもたらした。
その後、防災・災害対応、再生可能エネルギー、循環型エネルギーインフラへと事業を広げながらも、同社が一貫して掲げてきたのは、「環境に良いことしかやらない」という企業ビジョンである。目先の利益ではなく、100年後の社会と地球を見据えて技術を磨き続ける。多摩地域から世界へ、未来を明るく照らす同社の挑戦を紐解く。
事業の特徴
ホタルの再生事業が始まり
同社の起源は2000(平成12)年、ホタルの生息地再生を目的とした環境再生事業(※1)で、当時はボランティア活動の一環であった。代表取締役社長の平塚利男さんが、前職の研究で培った知識や経験をもとにホタルの減少原因を調査するなか、酸性雨による水質悪化という原因に行き着いた。土壌を中和する特許技術を用いたビオトープによって、国内130カ所以上でホタルの再生に成功。しかし、その後起業した2006(平成18)年当時は、「CO2削減」という言葉ですらまだ一般的ではなく、平塚さんが法務局に提出した事業内容もなかなか理解が得られずに、登記には3カ月を要したという。同社が後に開発する自律型街路灯や、環境再生といった概念を含め、社会にとってはそれほど早い状況で始まった事業であった。しかしそれでも平塚さんが譲らなかったことが、冒頭でも紹介した企業ビジョン「環境に良いことしかやらない」である。20年近く一度も揺らぐことなく、社員やメディアに対してもこの姿勢を一貫して示し続けた結果、共感する人や企業が少しずつ集まり、現在の事業基盤が形づくられていった。
※1:損なわれた自然環境を積極的に取り戻し、生態系の健全性を回復させる活動の総称
「”ホタルに悪影響がない街路灯”が存在しない」という課題を解決するリフレクター技術
技術開発の原点にもまた、ホタルが深く関わっている。ホタル再生が叶った山間部のビオトープに多数の観賞客が訪れるようになり、地域活性化の面から周辺地域に歓迎される一方、人の安全対策として街路灯の設置が求められていた。ところが水銀灯など従来の街路灯は紫外線を多く出すため、ホタルを含む夜行性の昆虫を引き寄せ、結果的に死滅させてしまう。そこで紫外線を出さないLED照明を探したが、当時はまだLED照明が実用段階になく、明かりが届く距離も短く、街路灯として機能しなかった。同社ではこの課題解決のため、自ら照明技術開発に踏み出すことにした。そこで開発したのが、レンズを一切使わず、反射板だけで遠くまで明かりを飛ばす独自のリフレクター技術「MiLED(ミレッド)テクノロジー」である。その発想の原点は意外にも、日本の昔ながらの住まいにあった。平塚さんが着目したのは、かつての住宅に多く使われていた白い漆喰(しっくい)壁だ。電灯のない時代、人々はろうそくのわずかな灯りで部屋全体を照らしていた。「漆喰には光を効果的に反射・拡散する性質がある」という気づきが、LEDの光を“点”ではなく“面”として活かす発想へとつながり、MiLEDテクノロジーは従来30センチ程度しか届かないLEDの光を、25メートル先まで届けることに成功した。
知的財産戦略型企業としての基盤を築く
MiLEDテクノロジーは世界特許として認められ、国内大手メーカー2社へライセンス供与された。その契約金が次なる研究開発に挑むための重要な原資となり、その後4年間にわたり売上なしで研究開発に集中するという、小規模企業にとって極めて異例と思える選択を可能にした。同社の知財は現在、海外含めて百数十件にも上る。「私たちが世に送り出す製品はすべて、知的財産と結びついています。大量生産・大量廃棄を前提としたビジネスではなく、大手企業が手を出しにくい隙間を独自の技術で埋めていく姿勢が、競争力の源であると自負しています」と平塚さんは語る。MiLEDテクノロジーは現在、超軽量でヘルメットや腕に装着可能な多用途LEDライト「MiLED mini III」、充電式特殊LED投光器「X-teraso(エックステラソー)」や、指紋などの微細な証拠を見つけるための特殊ライト「TRACE(トレース)-2000A」など、幅広い製品に応用されている。
防災・災害対応へと広がる技術の応用
同社の製品は、防災・災害対応の分野でも大いに力を発揮する。東日本大震災を契機に開発された充電式特殊LED投光器「X-teraso」は、発電機不要で長時間点灯し持ち運びができることから避難所や医療現場で非常用照明として重宝され、全国の警察・消防、工事現場などでも数多く採用されている。さらに近年では、電線を必要としない自律型スマート街路灯「THE REBORN LIGHT smart」や、停電時にも電力供給を止めないリフィルバッテリー式発電機「G-CROSS」に加え、太陽光路面発電パネル「Solar Mobiway」および「Solar Mobiway block」の開発・実装も進んでいる。車両や歩行者の通行空間そのものが発電所となるこれらの技術は、非常時における電力の分散確保や、避難経路の視認性向上といった新たな防災インフラの可能性を広げるものだ。同社の製品は、「消えない明かり」「止まらない電力」を軸に進化を続けており、いずれも単なる省エネ製品ではなく、災害時に社会インフラとして機能することを前提に開発されている点に特徴がある。
EVリパーパスが切り拓く循環型エネルギーインフラ
近年同社が注力するのが、電気自動車(EV)から取り外された使用済みバッテリーを再利用する「EVリパーパス(再製品化)事業」である。走行距離が短くなったEV用バッテリー(リチウムイオンバッテリー)は車載用途としては価値を失うが、それ以外の用途では十分な性能を持つ。現在、製造時の倍以上のエネルギーコストをかけて廃棄処分しているこのバッテリーを、別の用途で再利用することにより、新たな電池製造に伴うCO2排出量を削減できる。同社ではこのバッテリーを独自の評価技術で診断し、街路灯や蓄電池としてリパーパスする仕組みを構築した。2019(平成31)年3月に福島県浪江町で実施された「THE REBORN LIGHT」プロジェクトでは、電線のない国道に同社が開発した自律型街路灯を設置し、送電インフラがなくても明かりを絶やさない実証に成功している。リパーパス、そして将来的なリサイクルへとつながる循環型モデルは、100年先を見据えたエネルギーインフラの姿を示すとして海外からも注目されるほか、「第11回ジャパン・レジリエンス・アワード」では単独の民間企業として初の最優秀賞を受賞した。
「社員全員が開発者」である組織文化と100年先の視座
会社全体で43人(社員数32人)という小規模な組織ながら、数多くの特許技術を生み出し続けている背景に、「社員全員が開発者であれ」という組織文化がある。技術者だけでなく営業・人事総務など、あらゆる立場の社員が日常の気づきを提案すると、否定されることなく社内で議論されるという。このように企業のコンセプトを何よりも大切に、全員で共有して“濃い血”を組織に通わせることが、急拡大の中でも軸を失わないために重要だと平塚さんは話す。同社では八王子GX推進機構(※2)の設立や自治体との連携を通じ、地域から社会全体へと、その技術と思想を広げようとしている。そこで目指すのは目先の利益ではなく、100年後も人と地球が共に生きられる社会。その未来を照らす明かりは多摩地域から世界へと放たれている。
※2:地域の脱炭素化と災害に強い街づくりを同時に進めるために設立された一般社団法人。八王子市の「ゼロカーボンシティ」実現を目指し、地域の企業・自治体・市民が協働してGX(グリーントランスフォーメーション)を推進するプラットフォームとして機能する。
第23回多摩ブルー・グリーン賞で最優秀賞を受賞
多摩地域の中小企業の活性化と地域経済の振興に寄与することを目的に、企業の優れた技術や製品とビジネスモデルを評価する第23回多摩ブルー・グリーン賞(多摩信用金庫主催)において、MIRAI-LABO株式会社が経営部門(多摩グリーン賞)の最優秀賞を受賞した。2025(令和7)年12月23日に開催された表彰式では、EVリパーパスバッテリー事業の取り組みについて、「EVの普及が急速に進む世の中において先駆的なEVのサーキュラーエコノミーモデルの実現につながる」として高く評価された。
お話を伺った人

MIRAI-LABO株式会社
代表取締役社長
平塚 利男さん
企業概要
| HP | https://mirai-lab.com |
| 代表者名 | 平塚 利男 |
| 資本金 | 98,000,000円 |
| 創業 | 2006年4月6日 |
| 社員数 | 会社全体で43人(社員数32人) |
