2026.06.01
小平市

通信制高校を支える校務支援システム
元数学教諭が多様な学び場をDX支援

株式会社ぱんぷきんラボ[2026年4月取材]

 通信制高校に通う生徒は2025(令和7)年度に初めて30万人を超え、過去最多を更新した。少子化により高校生徒の総数が減少する一方で、通信制高校の生徒数は年々増加し、高校生全体に占める割合は9.6%、約10人に1人に達している(※1)。

 通信制高校の制度は戦後、働きながら学ぶ若者に高等教育の機会を提供する仕組みとして始まった。全日制や定時制と異なり、自宅での自学自習を基本とし、添削指導(レポート指導)や面接指導(スクーリング)、試験によって単位を取得する点に特徴がある。近年はオンライン教育の普及により、時間や方法を選択できる環境が整い、不登校経験者や多様な背景を持つ生徒など、幅広い層に開かれた教育の場となっている。その背景には、不登校児童の増加や、多様な学び方・生き方を尊重する社会意識の変化があり、スポーツや芸能活動との両立や自分のペースでの学習など、主体的に選ばれる進路として広がりを見せている。

 一方で、生徒ごとに異なる履修や事情に対応する必要があるため、学習状況の管理や個別対応に関わる業務が増大している。一般的な校務支援システムでは対応が難しく、現場では属人的な運用に依存せざるを得ない状況が続いた。全日制高校とは履修内容も事情も異なるため、一般的に普及している校務支援システムでは対応しきれないのが現状だ。こうした課題に対し、現場経験から開発されたのが、通信制高校専用の校務支援システム「Student Mypage Lite(スチューデント・マイページ・ライト)」である。開発を手がけた株式会社ぱんぷきんラボ 代表取締役の保坂英之さんを取材した。

(図1)文部科学省「学校基本調査」(2024(令和7)年)
(図1)文部科学省「学校基本調査」(2024(令和7)年)

 

(図2)通信制高等学校情報発信サイト(文部科学省)全国私立通信制高等学校協会

※1 文部科学省「通信制課程における教育課程について」(2026(令和8)2月)
https://www.mext.go.jp/content/20260325_mxt_koukou01_000048492_0002.pdf

ポイント

課題の背景・活動のきっかけ

● 通信制高校の急速な拡大

通信制高校は近年、生徒数が増加し、高校生全体の約10%を占めるまでに拡大している。少子化で全体の生徒数が減るなかでも増加している点が特徴で、不登校の増加や多様な学び方へのニーズの高まりが背景にある。かつては限られた選択肢だったが、現在は主体的に選ばれる進路へと変化し、学校数も増加している。

● 全日制高校とは異なる履修システムと生徒事情

同制度は、全日制・定時制のように学年やクラス単位で一律に履修を進めるのではなく、一人ひとりの状況に応じて履修科目や単位数が個別に設定される。転入・編入が多く、入学時期も年度途中に分散しており、前籍校で取得した単位を引き継ぐため、卒業までの学習計画は生徒ごとに大きく異なる。学習はレポート課題の提出と添削指導を基本とし、一定時間の面接指導(スクーリング)への出席も単位取得の要件となるなど、プロセスも複雑で、学校側には個別に対応した管理が求められる。

● 教員の業務負担の増加

履修状況が個々に異なるため、レポート管理、出席確認、履修登録、学費管理など個別対応が必要となり、膨大な校務が発生する。特に転入生の単位引き継ぎや履修調整などは複雑で、教員の負担は大きい。全国的に学校教育現場では、教員の長時間労働改善に向けてDX化が進められてきたが、一般的に普及する校務支援システムは全日制向けに作られているため、履修システムや提出書類が異なり各校がExcelで管理するなど、人的リソースに頼る運営が続いてきた。

● 現場経験からの課題意識

代表の保坂さんは府中市出身、国立市育ち。国立市にあるNHK学園高等学校で数学教員として14年間勤務し、業界の変遷を現場で見てきた。かつてはネガティブに捉えられがちだった同制度が徐々に認知され、選ばれる進路へと変わる過程を経験するなかで、運営の複雑さとシステム不足に課題を感じていた。保坂さんは「例えば大学入試の時に出す調査書や、生徒個々に保存する生徒指導要録など必須書類も書式が違うため、先生方の人的対応に依存して運用されていました」と振り返る。市場が拡大する前から必要性を見据え、現場目線での開発に着手した。

開発した保坂社長

開発した保坂社長

活動の特徴

● 通信制高校専用の設計

「Student Mypage Lite」は、通信制高校特有の運用に対応するために設計された校務支援システムである。生徒ごとに異なる履修科目や単位数、転入・編入の履歴管理など、個別データを前提とした構造となっている。全日制のように学年単位で一括管理するのではなく、一人ひとりに最適化された管理が可能で、通信制高校の実態に即した運用を実現している。

成績管理画面。時間・単位・評定・教材発送状況などを個別に管理できる

● 校務の一元管理
同システムでは、学籍・履修・成績・出席・学費といった学校運営に必要な情報を一元管理できる点が特徴だ。従来は紙や複数のツールで分散していた情報を統合することで、業務効率化と情報の正確性を両立。帳票の出力や法令に基づく書類作成にも対応しており、学校運営の基盤として機能する。「スマートフォンで登録した出席記録や、レポートの提出や評価を一元化することで誤入力防止にも。評定の違いで人生が大きく変わることもあるので、先生方の業務効率化とともに生徒の人生を預かっている使命を感じています」と保坂さん。

生徒指導要録など紙ベースの出力にも対応。出席状況や単位などが紐づいている

 

● 学習状況の見える化
生徒や保護者はマイページを通じて、レポート提出状況やスクーリング予定、成績などをリアルタイムで確認できる。通信制高校では自己管理が求められる一方で、学習習慣が定着していないケースも多い。進捗が可視化されることで、遅れを防ぎ、継続的な学習を促す。先生とのダイレクトメッセージ機能は、個別メッセージのほか一斉配信や送信予約にも対応し好評だという。

レポートの提出状況や〆切、スクーリングの出席状況を見える化。生徒と保護者のスマートフォンからも閲覧可能

ダイレクトメッセージ画面。個別・一斉・予約送信に対応

● 現場目線の開発とサポート
開発は通信制高校の元教員が中心となり、実際の運用を踏まえた使いやすさが追求されている。導入後もチャットによる迅速な問い合わせ対応や、学校ごとの運用に合わせたサポートを提供。専属担当が伴走する体制により、現場の不安を軽減し、継続的な活用を支えている。「通信制高校は新設校も多く、複雑な法令や監査に向けたデータ管理などに苦慮されている状況があります。我々のシステムが学校の適正運営の手助けになれば」と現場への思いをにじませる。

小平市の鷹の台駅前にあるオフィス/起業家万博・多摩ブルーグリーン賞などで受賞

目指す未来

通信制高校を特別な選択肢ではなく、誰もが安心して選べる「当たり前の進路」として定着させること。

パートナー・関係先

■パートナー
東京書籍株式会社 
株式会社Smarky 

■導入校
学校法人理知の杜  松本国際高等学校 
学校法人加計学園  岡山理科大学付属高等学校
ほか

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