2024.10.01
羽村市

食品ごみが電気に
食品廃棄物のエネルギー活用による
循環型社会の実現

羽村バイオガス発電所[2023年9月取材]

 近年、地球温暖化が加速し、その原因となる温室効果ガスの排出削減が、地球全体で極めて重要な課題となっている。気候変動に関する報告書「気候変動と土地(※)」(IPCC:気候変動に関する政府間パネル)によると、2010(平成22)年から2016(平成28)年の温室効果ガス総排出量のうち、8〜10%が食品ロスおよび食品廃棄からの排出と推定されており、現在多くの自治体で、焼却ごみの削減に向けた取り組みを推進している。

 国際的には、2015(平成27)年のパリ協定で温暖化対策が強調され、多くの国が2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を削減し、吸収量と均衡させること)の目標を掲げている。日本も2020(令和2)年に2050年までの達成を宣言し、再生可能エネルギーの拡充やエネルギー効率の向上、技術革新を促進している。

 多摩地域で食品廃棄物から再生可能エネルギーを生産する「西東京リサイクルセンター(羽村バイオガス発電所)」を取材した。

(※)「気候変動と土地:気候変動、砂漠化、土地の劣化、持続可能な土地管理、食料安全保障及び陸域生態系における温室効果ガスフラックスに関する IPCC 特別報告書」(2019年)

◎西東京リサイクルセンター(羽村バイオガス発電所)

ポイント

課題の背景・活動のきっかけ

●食品廃棄物の増加

日本では、年間約472万t(うち家庭系約236万t、事業系約236万t)の食品廃棄物の発生が推計されている(令和4年度・環境省)。農林水産省が、2019(令和元)年7月に公表した「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)の基本方針において、食品関連事業者から発生する事業系食品ロスを2000(平成12)年度比で2030年度までに半減させる目標を設定し、家庭系食品ロスにおいても同様の目標を設定している。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億tの食料が毎年廃棄されており、食品ロスの削減は、環境保護、経済的効率、そして社会的な公平性の向上のために急務とされている。

●廃棄物から発生するガスを再生可能エネルギーに

食品廃棄物の問題のひとつが、埋立地で発生するメタンガスによる温室効果ガスの排出だが、このメタンガスをエネルギーとして有効活用するのがバイオマス発電である。再生可能エネルギーとして、温室効果ガス排出の削減や化石燃料依存の軽減が期待できるほか、植物が成長過程で吸収した二酸化炭素を燃焼時に放出するため、カーボンニュートラル(炭素循環型)のエネルギーとして注目されている。併せて、天候に関わらず安定的に電力を供給できることも特徴。

食品廃棄物をエネルギー源として活用することは、廃棄物処理とエネルギー問題の双方において循環型社会に貢献している。

 

活動の特徴

●食品廃棄物をエネルギーに、プラスチック容器もリサイクル

同センターでは、食品工場やスーパー、コンビニ、飲食店などの事業者より収集した食品廃棄物を、発電所内でプラスチック容器や紙、金属などと分別した後、微生物によるメタン発酵を行う。メタン発酵で発生したバイオガスからつくられる電気エネルギーは再生可能エネルギーとして売電され、熱エネルギーは施設内で有効利用。さらに、分別されたプラスチック容器などはリサイクルに回され、メタン発酵の残渣である消化液は肥料としてアップサイクルされる。

●ヤオコーと連携した環境への取組み

脱炭素や資源循環など環境対策に積極的に取り組む株式会社ヤオコーでは、2022(令和4)年度から、運営するスーパーマーケットYAOKOの一部店舗の食品廃棄物を、羽村バイオガス発電所でバイオガス化し、可燃ごみ削減や食品リサイクル率の大幅な向上を実現。さらに、アップサイクルされた発酵残渣からできた有機堆肥を自社ファームに漉き込み、そこでつくられた野菜を店頭に並べるなど、その取り組みは発展を続けている。

●年間で1,550世帯相当の電力を発電

同センターでは、市内事業者だけでなく多摩地域全域、さらに23区や埼玉県、神奈川県の一部を含む半径30kmの範囲から1日168tの食品廃棄物を受け入れ、年間で約1,550世帯相当が使用する量の電気エネルギーを発電している。地元人材の雇用も創出しており、バイオガス発電は地域が抱えるさまざまな課題解決に寄与する事業として注目されている。

 

●自治体や地域住民の理解が不可欠

環境事業の開業・運営にあたっては、自治体ならびに地域住民と住民説明会などでの関係性構築や相互理解にも努めてきた。また、市内小学校や教育委員会などでの環境教育にも取り組んでおり、子どもたちが地元の取り組みを知り、資源や環境について考える機会をつくり出している。

食品廃棄物とそのほかを分別する前処理棟の内部

目指す未来

持続可能な再生可能エネルギーを供給し、廃プラスチック再生の内製化に取り組みワンストップで資源を有効活用できるようにすること。地元の雇用創出や経済活動を活性化し、地域連携を図りながら持続可能な循環社会に貢献すること。

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