2024.06.01
府中市

市民と団体・企業・行政をつなぐ
まちづくりのプラットフォーム

府中市市民活動センター プラッツ [2024年3月取材]

「市民協働(しみんきょうどう※1)のまちづくり」とは、市民や企業や行政などが協力して暮らしやすいまちづくりを共に進めること。これにより様々な地域課題の解決や公共サービスの提供を持続的に可能とし、誰にとっても暮らしやすい地域社会を目指す取り組みである。近年、その重要性はますます認識され、日本でも市民協働に積極的に取り組む地域が増えている。その背景には、人口減少によって財源が縮小していくなかで、行政だけでは解決できない地域の課題が増えていくとの予想がある。貧困、子育てや教育、高齢者や障がい者の見守り、防災などの課題に対し、市民や企業、団体が協力し合い、互いの不足を補い、それぞれの立場の意見や特性を認めあいながら共にまちづくりをすることが、求められている。

東京都で初の「市民協働都市」を2014(平成26)年に宣言して10年を迎える、府中市の「府中市市民活動センター プラッツ」を取材した。

※1:地域により「地域協働」ともいう

府中市市民活動センタープラッツ

ポイント

課題の背景・活動のきっかけ

●「市民協働都市」を宣言して10年
府中市では2014(平成26)年に「府中市市民協働の推進に関する基本方針」を策定するとともに「市民協働都市」を宣言。市民(個人)、自治会・町内会、文化センター圏域コミュニティ協議会、自治会連合会、NPO・ボランティア団体、教育機関、事業者、市が相互に連携・協力して「市民協働によるまちづくり」を進めている。

●中間支援組織として市民活動センター「プラッツ」開設
2017(平成29)年には、市民活動・協働の拠点施設として「市民活動センター プラッツ」(以下、「プラッツ」)を、京王線府中駅南口直結の複合商業施設「ル・シーニュ」に開設(5、6階)。同市における市民協働の主な中間支援組織として、協働に関する情報提供、普及啓発、担い手の育成及び相互交流などに努める。

 

●高い専門性とスキルの結びつきにより課題解決を目指す協働
市民(個人)、自治会・町内会、コミュニティ協議会、自治会連合会、NPO・ボランティア団体、教育機関、事業者などはそれぞれ高い専門性とスキルを持つ。協働によってそれらが有機的に結びつくことで、より迅速かつ効果的に地域課題の解決に近づくことができる。

協働の構造

活動の特徴

●増える登録団体数と広がる様々な活動
2024(令和6)年3月末時点で、プラッツに登録する市民活動団体は446、また、プラッツが運営する市民活動のポータルサイト「プラnet」には、市民活動団体の他にも社会貢献に取り組む企業や地域課題の解決に取り組む自治会や行政各課が登録しており、その数は562。


登録団体数の推移

●「市民活動団体」としてプラッツに登録するには
登録の基準は、「自分たちの持つノウハウを地域に活かして、課題解決をするという目的があること」と、「地域に開かれた活動であること」など。活動拠点の一つが府中であれば居住地は問わない。ちなみに「プラnet」には社会貢献活動に取り組んでいる民間企業も登録可能で、市内外の企業も多く登録している。


多様なステークホルダー

●環境、教育、福祉、国際協力、まちづくりなどあらゆる市民活動がある
同市では市民活動の中でも「文化」分野の活動が比較的多い。もともと社会教育をする団体や仲間内で趣味を楽しんでいたサークルが、得意分野を活かして課題解決につなげるために登録することもある。例えばマジックを楽しむ高齢者の団体が、マジックに触れる機会の少ない子どもや親子に向けてイベントを開催したり、子どもたちにマジックを教えたりすることで、文化交流や世代交流などに取り組んでいる。


左:ボードゲームイベントを通じて親子や親子同士の交流を促す団体

右:スポーツを通じて地域の子どもたちの「心」と「身体」の成長や地域活性化を図る団体

●プラッツの支援内容と一大イベント「府中市民協働まつり」
プラッツが行う主な支援は、スペース利用と情報発信、資金調達などの相談対応、市民(個人)や企業の交流や協働促進。なかでも2024(令和6)年に10回目の開催となる「府中市民協働まつり」は、市内の市民活動団体や学校、企業、行政など、プラッツや「プラnet」の登録団体が一堂に会する一大イベントである(11月23日、24日の2日間)。当日は、ブース出展やパネルでの活動紹介、バルトホールでのパフォーマンスなどを予定。参加団体とプラッツで実行委員会としてタッグを組み、企画・運営をすることで、団体同士の交流の機会にもなっている。




●ソーシャルビジネスラボとソーシャルビジネスプランコンテスト
プラッツの「ソーシャルビジネスラボ」は、コミュニティビジネス・ソーシャルビジネスを行う人や、起業を目指す人を応援する場所。本会員の事業の後押しと、ソーシャルビジネスの認知向上を目的に、プラッツでは2024(令和6)年1月に「ソーシャルビジネスプランコンテスト」を初開催。公開プレゼン審査会では、書類審査を通過した市内外の11団体によるプレゼンテーションが行われ、優秀賞1件、準優勝1件、オーディエンス賞1件、審査員特別賞1件が決定。参加団体の他にも多くの観覧があり、近い課題を持つ団体同士で情報交換をする場面も見られた。

  

●多くの市民活動団体が持つ課題とプラッツのサポート
年に一度の団体登録の更新では、スタッフが活動状況や運営課題をヒアリング。特に、高齢者が中心の団体では「活動の継続」が課題となっており、メンバーを増やし活動を継続したい団体には、プラッツが会員募集、SNSでの情報発信、協働まつりへの参加呼びかけなどをサポートする。スマートフォンの操作に不慣れな高齢者でも、自らSNSでの情報発信ができるようになるまでスタッフが丁寧に教えられるのは、コロナ禍において市内の高齢者施設や自治会などでICTツールの活用支援を数多く実施してきたノウハウがあればこそ。

目指す未来

地域に暮らす市民(個人)が、行政や企業などと対等な立場でまちづくりに主体的に取り組み、地域で起こるあらゆる問題に対し、協働で物事を解決する社会をつくること

パートナー・関係先

府中市協働共創推進課
公益財団法人府中文化振興財団

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