2024.04.01
立川市

人の縁つなぎ 孤独のないまち目指す
地域福祉を支える中間支援組織

立川市社会福祉協議会 [2024年2月取材]

 「地域福祉」とは、それぞれの地域において人々が安心して暮らせるよう、地域住民や社会福祉関係者が互いに協力し合って地域の福祉課題の解決に取り組む考え方である。2000(平成12)年に社会福祉事業法から改称した「社会福祉法」は、地域住民、社会福祉関係者などが協力し合って「地域福祉の推進」に努めるよう定めている。しかし近年の日本では、少子高齢化や核家族化、暮らしの多様化を背景に、地域における日常的な関わりの機会は減少。社会的孤立、不登校、ひきこもりなど問題も多様化し、様々な困りごとや悩みを抱える人がその悩みをどこに相談したら良いかわからず、孤立してしまうケースも多い。

 社会福祉活動を推進することを目的とした非営利の民間組織「社会福祉協議会」。それぞれの都道府県や市区町村で、誰もが住み慣れたまちで安心して生活できるよう、福祉サービスや相談活動、ボランティアや市民活動の支援など幅広く行っている。「誰もが つうに らせる あわせなまち 立川」を合言葉に活動する立川市社会福祉協議会に、「地域福祉」について伺った。

(画像は幸町にある地域福祉アンテナショップ「スマイルキッチン」。木の温かみを感じる建物では「食べて元気いっぱい だれでも食堂」が開催され、庭では絵本の読み聞かせが行われるなど地域住民の交流スペースとして活用されている。)

◎立川市社会福祉協議会 https://www.tachikawa-shakyo.or.jp

 

ポイント

課題の背景・活動のきっかけ

●1960(昭和35)年に立川市の住民を会員とする民間福祉団体として設立。組織の使命を「住民主体による福祉コミュニティづくり」とし、「自分たちのまちは自分たちでつくりあげる」という視点で、立川を「誰もが安心して楽しく幸せに暮らせるまち」にするため、あらゆる住民の声を聞き、受け止め、住民が自ら考え行動することを支援。また、福祉を必要とする人々へ相談援助やサービスの提供を行い、地域福祉の推進を図る。

●市民参画により策定された地域福祉市民活動計画「立川あいあいプラン21(※1)」に基づき事業を推進。第5次の計画期間である2020〜2024年度は、「地域福祉アンテナショップの設置」「地域福祉コーディネーターの活動強化」「まるごと相談支援」が重点事項である(この3つは国から打ち出された「参加支援」「地域づくり」「断らない相談支援」と一致している)。

※1:地域の住民ニーズや福祉課題(生活課題)を解決するため、住民、社協、地域の民間団体などが連携し、それぞれに役割を担いながら地域福祉の推進を目的として様々な活動を行うことを計画化したもの。

活動の特徴

●「地域福祉アンテナショップ」とは誰にでも開かれた地域福祉の拠点

地域の空き部屋や空きスペースを活用し、2024(令和6)年2月時点で市内に14か所が点在している。全部型と協働型の2種類があり、全部型4か所は委託、協働型10か所は住民主体で運営。困りごとのある人が気軽に立ち寄り、相談や情報交換をしたり、趣味を楽しむサロンを開いたりできる場としてここから多様な交流を生み、孤立防止の効果も期待される。

●地域福祉アンテナショップの例「スマイルキッチン」と「BASE☆298」

幸町の「スマイルキッチン」(全部型)は樹々に囲まれたガラス張りの建物。おおむね­­­週に3回地域住民の交流スペースとして開かれて交流や趣味の活動の場となるほか、多世代交流を目的とした「食べて元気いっぱい だれでも食堂」も月に一度開催されている。また、若葉町の「BASE☆298」(全部型)は、月~金曜の10時~16時と比較的高頻度で開かれており、カフェのような雰囲気のなか誰でも本を読んだり、友達と過ごしたり、勉強や仕事ができる(利用の際は100円以上の寄付をいただきお礼として飲み物を提供)。

 
(左)バスロータリー前にある地域福祉アンテナショップ「BASE☆298」は居心地の良い居場所
(右)地域福祉アンテナショップ「ふじみ町みんなのおうち」は小学生向けの居場所、遊び場、学習支援の場


●「地域福祉コーディネーター」とは(※2)

住民、団体などの主体的な地域活動をサポートする専門職。立川市は2007(平成19)年度に都内で初めて同職を配置している。現在は市内を6つのエリア(福祉圏域)に分け、それぞれに各2名ずつ、計12名がいる。その主な役割は、「孤立のないまち」「住民が困りごとの解決に参加できるまち」を目指して、地域特性と課題に応じながら住民や関係機関と共に地域福祉活動を進めること。

 

 
(左)地域福祉コーディネーターは日々の相談を迅速に受けられるよう、各担当地域の包括支援センターに席を置く
(右)立川市の福祉圏域。市内でも地域の特性などによって6つに区分される

※2: 2022(令和4)年度より立川市では、地域福祉コーディネーターが「生活支援コーディネーター」を兼務(生活支援コーディネーターとは高齢者の生活支援・介護予防の基盤整備を推進する専門職)


●地域福祉コーディネーターの主な活動「個別相談対応」「地域づくり」「仕組みづくり」

一人ひとりの困りごとの相談を受け、必要に応じて専門の支援先へとつなぎつつ、そこから地域に潜在する福祉のニーズを把握し、同じ悩みを持つ人や団体同士をつなぎ、そこから生まれる「場」を作る活動に並走しながら、将来的には住民主体での自走を目指していく。例として、体操や歌や麻雀の会、男性の料理教室、一人暮らしの住民のための食事会、立川の災害対応を考える市民グループなどが活動中である。


●「市民参加型ワークショップ」でニーズ把握とネットワークづくり

地域づくりの一環として、市民参加型ワークショップ(地域住民とのアイデア交換会)を開催。このような機会を通じて、ニーズの把握やネットワークづくりを各地域で行いつつ、集まった意見は今後委員会などでの検討を経て次の地域福祉市民活動計画や地域福祉計画(行政計画)へと活かす。


 
2024(令和6)年1月と2月に富士見町で開催された市民参加型ワークショップの様子


●「連携の輪」が強み 中間支援組織として人の縁をつなぐ

住民の相談は、民生委員や関係機関などから社協に入ることも多い。また、時には専門知識や経験が不足している分野の相談もあるが、これまでの取り組みを通じて様々な個人や団体、企業などとの地域福祉における「連携の輪」を広げてきたことから現在では協力し合う関係ができており、どのような相談も受けられることが強みとなっている。今後も、地域福祉のための中間支援組織として人の縁をつなぎ、孤独のないまちを目指す。

目指す未来

地域で多様な人の縁をつなぎ、住民主体による福祉コミュニティづくりを進めることで、立川市を「誰もが安心して暮らせるまち」「孤立のないまち」にすること。

パートナー・関係先

全部型地域福祉アンテナショップ

◎にこにこサロン  立川市一番町4-62-3 市営一番町北住宅1号棟1F
◎BASE★298      立川市若葉町4-25−1 若葉町団地
◎はねきんのいえ  立川市羽衣町2-39-11
◎スマイルキッチン 立川市幸町5-64

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