空き家を「地域の資源」に!
小商いと地域交流の場として再生した
自治体の取り組み
治安や景観、住環境の悪化など、地域全体に大きな影響を及ぼす空き家問題。日本では年々空き家が増加し、国や自治体が実態調査や対応を進めている。
空き家は大きく「賃貸用または売却用の住宅」、別荘などの「二次的住宅」、「その他の住宅」の3つに分類することができるが、このうち「その他の住宅」は、居住者が長期にわたって不在だったり、建て替えなどのため取り壊すことになっている住宅などを指し、最も管理不十分になりやすい区分と考えられる。管理不十分な建物は経年により、外壁や屋根の落下、倒壊などの恐れ、虫や動物による周囲の衛生状態の悪化、防犯・防災性の低下など、周辺地域への様々な影響を生み出す。
増え続ける空き家への対策として、都道府県や自治体では独自に空き家条例を制定したり、所有者への指導、空き家バンクや空き家対策に関する相談窓口の設置などの取り組みをしている中、まちの特徴を活かしながら空き家の課題解決を目指すという調布市のプロジェクトについて、調布市都市整備部住宅課と、チャレンジショップ入居者である「minglelingo(みんぐるりんご)」の西村達也さん、西村愛子さんに伺った。
まちなかラボ富士見BASE ● https://fujimibase.studio.site
調布市都市整備部住宅課 ● https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1652064861896/index.html
ポイント
課題の背景・活動のきっかけ
●調布市では2020(令和2)年度から「空き家の課題解決」を目的とした「まちの『つながり』プロジェクト」を始動。本プロジェクトでは、「多摩地域の中でも都心に近く、人口が多く、多世代が暮らす」という調布市の特徴を活かしながら同課題の解決を目指す。
●2022(令和4)年6月1日、プロジェクトから生まれた初のチャレンジショップ兼交流拠点として「まちなかラボ富士見BASE」がオープン。戸建住宅が多い閑静な住宅街・富士見町の2階建ての一軒家(空き家)を活用。
●「まちなかラボ富士見BASE」は、地域の交流や活動と連携をしながら持続的な収益を目指すチャレンジショップとして、また地域をつなぐカフェとしても、地域で注目を集める。
活動の特徴
●「まちの『つながり』プロジェクト」は、空き家に新たな価値を見出し、地域の資源として積極的に活用、地域の魅力や活力を高めていくことを目標にスタート。まちづくりプロデューサーとして共立女子大学教授の高橋大輔さんと、SUGAWARADAISUKE建築事務所代表取締役の菅原大輔さんが参画。
●2階建ての一軒家(空き家)の、1F真ん中に無料カフェ「Our Living Room Café」、その左右に2つのショップ「みんぐるらんど」と「pebbles(ぺプルス)」。2Fの2部屋はフリースペース。
●「まちなかラボ富士見BASE」のチャレンジショップ入居者である「minglelingo」はアート、テクノロジーの創作の場の提供や、子どもも大人も楽しめるワークショップを開催する「みんぐるらんど」を1階で運営。もう一つのチャレンジショップ「pebbles」はプラスチックを回収し、新たな製品としてアップサイクルする再生プラスチックステーション。
●調布市では今後、市内の別エリアでも同様のプロジェクトを展開する方針。
「まちなかラボ富士見BASE」の図面(左)/ minglelingoのオープンアトリエ「みんぐるらんど」(右)
無料カフェ「Our Living Room Café」(左)
プラスチックを回収し、新たな製品としてアップサイクルする再生プラスチックステーション「pebbles」(右)
目指す未来
空き家に新たな価値を見出し、地域の資源として積極的に活用して、地域の魅力や活力を高めていくこと。地域でそれぞれの地域特性を活かした空き家活用が促進されること。